高校生のための化学講座

実験テーマの中から2つを選んで、午前と午後にそれぞれ1つずつ、担当研究室等で実験を行います。

実験番号 実験テーマ 担当研究室
水滴はどうして丸い 有機素材化学
光で色の変わる有機分子 有機機能化学
環境を守る化学技術 分析環境化学
パイナップルの香りをつくる 有機合成化学
ナイロンをつくろう 高分子合成化学
レーザー光を利用しよう ナノ材料物理化学
色々な方法で綺麗な結晶を作ろう エネルギー変換化学
X線回折で結晶を調べる 無機素材化学
パソコンで分子をつくろう 量子ナノ機能化学
10 ミクロで測るバイオアッセイ 分子生物工学
11 再生医用材料 生体材料化学

実験テーマの概要

1.水滴はどうして丸い(有機素材化学)

水と油のように混ざり合わない液体同士を激しく混ぜると「滴」は丸くなり、次第に再び水と油の層に分離します。このように「滴」が丸くなる理由について、実際に一円玉や洗剤を使った水の表面張力の実験を通じて理解します。

2.光で色の変わる有機分子(有機機能化学)

スピロピランは光照射によって可逆的に色が変化するフォトクロミズム分子です。この実験では、ニトロサリチルアルデヒドとインドリンをエタノール中で加熱還流してスピロピランを合成します。さらに、合成したスピロピランに紫外線を照射し、フォトクロミズム実験を行います。

3.環境を守る化学技術(分析環境化学)

環境を守る化学技術には、環境分析と処理技術があります。環境分析の方法の一つは、比色分析法が有名です。比色分析法は、試薬を封入した試験チューブに試験液を吸い込み、色の濃淡で目的物質の濃度を測定します。本テーマでは、アンモニウム体窒素及び化学的酸素要求量を比色分析法により定量し、水質分析を行います。また、凝集沈殿法を用いて、排水中の汚染物質を除去し、透明できれいな水を作る技術を体験します。

4.パイナップルの香りをつくる(有機合成化学)

カルボン酸とアルコールから生成するエステル類には、香料やフレーバーとして重要なものが多くあります。実験ではパイナップルやリンゴに含まれている主な芳香揮発成分である酪酸エチル(パイナップルオイル)を酪酸塩化物とエチルアルコールからつくります。このエステル化反応を加速する為に相間移動触媒などにより界面反応場を活用する合成手法も併せて紹介します。

5.ナイロンをつくろう(高分子合成化学)

代表的な合成繊維であるナイロンをつくる実験を行います。2種類の混ざり合わない液体の界面で瞬時に重合反応が起きて高分子の膜が生成します。その膜を引き上げることで繊維状のナイロンが連続的に生成する様子を観察してもらいます。

6.レーザー光を利用しよう(ナノ材料物理化学)

レーザー光やアークプラズマを用いて、フラーレンやカーボンナノチューブが合成できます。レーザー光の性質や特徴の理解のために、波長測定実験を行います。さらに、フラーレン合成や簡単な分析、分子模型の作製を通じて、表面にカーボン原子が美しく並んだ立体幾何学構造のナノワールドを覗いてみましょう。

7.色々な方法で綺麗な結晶を作ろう(エネルギー変換化学)

低融点の物質を自作ヒーターで融解・凝固させ、その時の結晶成長の様子や飽和水溶液からの結晶析出の様子をデジタルマイクロスコープによりリアルタイムで観察します。また、結晶の形と原子の並び方との関連性について理解します。

8.X線回折で結晶を調べる(無機素材化学)

結晶構造を、目で見ることはできません。それは、結晶構造が光の波長よりもはるかに小さいからです。そこで結晶構造を調べるには、結晶構造と同じ程度の波長の電磁波を当てる必要があります。今回は、結晶程度の波長であるX線が結晶面で、どのように反射しているのかを、反射X線の干渉を用いて調べます。

9.パソコンで分子をつくろう(量子ナノ機能化学)

計算機を用いた化学です。実際にパソコン(PC)操作を行いながら、分子モデリングソフトの操作法を説明します。その後、数名のグループの共同作業により、PCを用いてC60分子やC70分子の分子モデルを作りあげてもらいます。

10.ミクロで測るバイオアッセイ(分子生物工学)

微量定量が可能なミクロプレートを用いて、酵素と基質との界面で起こる酵素反応を測定します。百万分の1リットルを正確に測り取れる精密器機と酵素反応によって色が変化する特殊な基質を利用します。一度、ミクロの世界を体験してみて下さい。

11.再生医用材料(生体材料化学)

事故や病気で失われた臓器を幹細胞や生体材料で再生誘導する再生医療技術には、生体適合性材料が用いられています。こうした材料表面上でヒトの細胞がどのように界面を形成し振舞うかを、実際に細胞を触りながら観察し、細胞の動きを調節する生体材料の不思議さを体験します。